海外インターネットビジネス動向
News Volume 51 99年6月30日
返品ポリシー再考のすすめ
1年前に比べて、ずいぶん身近になったオンライン・ショッピング。それでも、インターネットで商品を購入することに不安を感じているユーザーは、まだたくさんいます。分かりやすいサイトのナビゲーション、購買意欲を刺激する効果的な商品提示など、積極的に売るためのサイト作りばかりではなく、ユーザーの不安材料を一つ一つつぶしていくことも、顧客層を拡げるための重要な戦略です。今回ご紹介する「返品ポリシー」も、ユーザーの不安解消のためにはなくてはならない要素です。
「返品ポリシーを明記することが大切です」と言うと、「そんなことは当たり前ではないか」と思われる人がほとんどでしょう。しかし、オンライン・ショッピング大国のアメリカでさえ、この「返品ポリシー」を記載していないサイトが意外に多いのです。今年2月、米国Shelly Taylor & Associates社が50の有力オンライン販売サイトを対象に行った調査結果によると、26パーセントの企業サイトが返品・交換に関する記述をしていませんでした。その中には、コンピュータ販売のデルコンピュータ(Dell Computer)やワイン販売のバーチャル・ヴィンヤーズ(Virtual Vineyards)などの著名サイトも含まれています。
今回は、対照的な返品ポリシーを打ち出している2つのサイトを例に、この問題に関するさまざまなアプローチを見ていきましょう。
●今回紹介する「返品ポリシー」の事例
(1)VitaminShoppe:
http://www.vitaminshoppe.com/
(ビタミン剤を中心に、18000点以上の商品を揃えた健康関連サイトです)
このサイトでは、トップページの右下に「顧客満足保証(Satisfaction Guarantee)」を示す画像アイコンを配置しています。このように目立つアイコンを使用することで、多くの競合サイトとは違う企業ポリシーを大々的に宣言しているのです。
VitaminShoppeは、カスタマーサービスのページで、「ユーザーに最高の品質・サービス・価値を提供する」という企業理念を明示し、顧客が受け取った商品に満足できなかった場合には、購入日より30日以内であれば、理由のいかんを問わず返金に応じることを約束しています。
ここまで思い切った返品ポリシーを掲げれば、当然、返金を求める顧客からのリクエストに対応するためのコストがかかります。一部のちゃっかりしたユーザーに制度が悪用される心配もあるでしょう。しかし、ビタミンや健康食品という、画像や解説文だけで品質を判断することが難しい商品は、初めてだとなかなか気軽に注文しにくいものです。同社は、たとえ余分なコストがかかったとしても、多くのユーザーに気軽に注文・試用してもらい、その中から気に入ったものを繰り返し購入してもらうことができれば、長期的にはビジネスにプラスになると考えているのです。
(2)Buy.com:
http://www.buy.com/
(コンピュータ・書籍などの多彩な商品群を揃え、日に1万点以上の商品を販売するサイトです)
「VitaminShoppe」とは対照的に、このサイトでは、返品のプロセスと条件を細かく説明することで、対応にかかるコストを抑え、安値販売を維持する戦略を採っています。
同社は返品を希望する顧客に対し、まずカスタマーサービスの専用番号に電話をして状況を説明し(通話料はBuy.comが負担)、返品承認番号(Return Merchandise Authorization/RMA number)を取得するよう求めています。番号は、商品の発送日から30日以内しか交付されず、取得後も、10日以内に行使しないと無効になります。
返品の方法にも指定があります。顧客は、通常の郵便小包ではなく、荷物の輸送状況を随時確認できるサービスを提供しているフェデラル・エクスプレス等の業者を使用し、発送後はただちにその小荷物番号を電子メールでBuy.comに連絡しなければなりません。こうして、Buy.comに返品された商品が到着すると、2週間から4週間でユーザーにやっと返金がなされるのです。しかも、発送中の事故による商品の破損など、やむを得ない返品の場合を除き、商品価格の15パーセントが返品の手数料として差し引かれると説明されています。
以上のような一般的ルール以外にも、購入した商品が通常価格商品なのか在庫一掃のセール品なのかといった区別に応じて、返品の条件が違っており、サイトではこれらについても詳細に説明しています。
これらの事例が示すように、同じ「返品ポリシー」でも、企業によりその内容に大きな違いがあります。 VitaminShoppeのように、顧客本位の返品ポリシーをオンライン販売のプロモーションの一環と考える企業から、Buy.comのように、詳細な返品ポリシーを明記・実践することで返品に関わる余分なコストを排除しようとする企業までさまざまです。しかしいずれのアプローチも、万一の場合の対応方法をユーザーに明確に伝えることで、顧客の疑問・不安を解消し、信頼感を高める効果を上げているのです。
扱う商品やターゲット層により、返品ポリシーも一様ではありません。返品ポリシーの目的も、ここでご紹介した販売促進やコスト削減だけにとどまらないでしょう。この機会に、貴社の返品ポリシーを戦略的に見直し、それをサイト上でどのように提示していけば効果的かを検討してみてください。
【参考サイト】
日本通信販売協会が作成している電子商取引を行う上でのガイドラインです。「返品条件の表示」の他、消費者の信頼を確保した電子商取引を行うための注意点を細かく説明しています。
●「電子商取引のガイドライン」
http://www.jadma.org/newtop/EC.html
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