海外インターネットビジネス動向


News Volume 53 99年7月28日

ユーザー本位の決済方法

米サイバーショップ社が最近実施した調査によると、米国のインターネットユーザーの53パーセントが、すでに1999年になってから何らかの商品をオンラインで購入しています。このような高い購入率を支えている要素は何でしょうか?

米国では、オンラインショッピングの便利さを追求しているサイトが増えているだけでなく、前回のニュースレターでもご紹介したように、口コミの効果がかなりの程度まで上がっています。このことは、オンラインショッピングのネガティブな面よりもポジティブな面に目を向けるユーザーが確実に増えていることを示唆しています。

米国で、オンラインショップが広く受け入れられるようになった背景には、決済についてのハードルの低さも重要な要素として指摘されています。今回のニュースレターでは、米国の著名サイトが実際にどのような決済方法を取り入れているのかを見ながら、日本のサイバービジネスが決済の問題にどう取り組んでいけば良いのかを考えてみましょう。


●今回紹介する「決済方法」の事例

今回は、比較的高額な商品を扱うサイトと安価な商品を扱うサイトをご紹介し、米国の代表的な企業サイトがどのような決済方法を採用しているのかを比較したいと思います。

(1)Apple Computer:
http://www.apple.com/

(2)Amazon.com:
http://www.amazon.com/

アップルのサイトでは、同社にとって久々の大ヒット商品となったiMacはもちろんのこと、9月に発売が予定されているノートタイプのiBookも予約購入することができます。このようなハードウェア製品の価格帯は1,000ドル以上と、オンラインで購入できる商品の中では高めです。

一方、アマゾン・ドット・コムで販売されているのは、書籍・CD・ビデオソフトなど、単価が10〜30ドル程度の商品が主流です。

では、こうした価格帯の違いによって、決済方法にも差はあるのでしょうか。答えは「ノー」です。アップルもアマゾンも、「クレジットカード」「マネーオーダー(簡易為替)」「銀行小切手」の3種類の決済オプションの中から、ユーザーに都合のよい方法を選択してもらうという形式で一致していました。

クレジットカード社会である米国では、オンラインショッピングが登場する以前から、一般店舗や通信販売においてカード決済が広く利用されてきました。消費者の財布の中にも、100ドル札の代わりに各種のカードがぎっしりと詰まっているのが普通です。このように、普及率・利用率ともに国内で群を抜いているクレジットカードを主な決済手段としているサイトが多いのは、当然のことといえるでしょう。また、上記の例にあった他の決済手段であるマネーオーダーや銀行小切手も、口座振り込みが日本ほど一般的でない米国で、人々が日常ひんぱんに利用している送金手段です。

つまり、一般の人々に認知されている決済方法をきちんと取り入れていれば、ユーザーが商品を購入したいと思っているタイミングを逃すことなく、販売を成立させることができるのです。対象としているユーザーが慣れている方法で、安心感を与えて販売に繋げる。常にこのことに注意しなければなりません。

【補足】
すでに、クレジットカード番号を暗号化して送信する技術は、ほぼ問題がないレベルに達しています。さらに、米国のクレジットカード保有者は、万一不正にカードを使用された場合でも、50ドル以上の被害額に対して支払義務を免除されるという法律にも保護されています。このような技術的・法律的なサポートも、米国におけるオンライン販売の拡大に貢献しています。


それでは、日本で一般に受け入れられている決済方法とは何でしょうか?

日経ネットビジネスが今年6月に実施した「第8回インターネット・アクティブ・ユーザー調査」によると、一番最近のオンライン・ショッピングの決済で利用したものは、「銀行・郵便振り込み 34.3%」「代金引き換え 21.6%」「電子商店のページでクレジットカード番号を入力して決済 17.1%」「クレジットカード会社が提供するSETによる電子決済サービス 7.9%」「FAXや電話でクレジットカード番号を通知して決済 7.7%」となっています。

さらに、コンビニ決済、アコシスなどの汎用型決済サービスなどが続きますが、これらの使用率は3パーセント以下となり、上位の決済方法とはかなり差があります。つまり、日本のインターネットユーザーを対象としてオンラインで商売を行うためには、「銀行・郵便振り込み」「代金引き換え」「何らかの形でのクレジットカードの使用」が、必須決済方法となっているのです。

【参考サイト】
日経マルチメディア 98年11月号
クレジットカード決済導入に関する記事
http://bizit.nikkeibp.co.jp/it/ec/column/contents/ecqa9811a.shtml


今回のように整理してみると、インターネットならではの決済方法である電子マネー等の利用はあまり広がっていないことがわかります。暗号化技術の発達とともに安心できる環境が整ってきた米国ではクレジットカードの利用、クレジットカードの利用に慣れていない日本では銀行・郵便振り込みの利用というように、結局はユーザーが日常的に「便利」「安心」と感じている決済方法が主流となっているのです。それぞれの国の商習慣が、オンラインの世界にも生き続けています。




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