海外インターネットビジネス動向


News Volume 33 98年8月26日

これからのウェブビジネス

先週、アメリカの首都ワシントンで、「ソフトウェア・デベロップメント‘98」というコンベンションが開かれました。今回はちょっと趣向を変え、この中で行われた基調講演の一つ、「5年後に向けたインターネットのあり方(Web2003: A Five-Year Perspective on the Future of the Internet)」から、ハイライトをご紹介したいと思います。

まず最初に、講師のJakob Nielsen氏についてご紹介しましょう。彼は、この7月までサンマイクロシステムズの技術顧問として活躍するかたわら、インターネット関連の書籍を多数著してきました。有名な電子マガジンの「Ziff-Davis Network」が、「ウェブ分野で最も頭の切れる人物」と評していることからもわかるように、独創的かつ核心をついた発想の持ち主として知られています。このほどサンから独立、アップルコンピュータの元副社長Donald Norman氏とともに、「Nielsen Norman Group」というコンサルティング企業を設立しました。

目下、全米からの講演依頼が殺到中というNielsen氏は、インターネットビジネスの今後の方向性をどのように考えているのでしょうか。


(1)講演の流れ

1.  「普通の人々」の視点に返れ
2.  変化しているウェブの現状
3.  満足にはほど遠いインターネットの使用感
4.  5年後に向けたインターネットへの提言


(2)講演内容ハイライト

1.「普通の人々」の視点に返れ

5年後に向けたインターネットのあり方を考えるにあたり、まずしなければならないのは、現在この時点で、インターネットの世界の入口に立っている「普通の人々」の声に耳を傾けることです。

「ログインできないよ」
「私のコンピュータからネットスケープのアイコンが消えてしまった!」
「モデムがダイヤルしないんです」

このように、コンピュータの知識も不十分で、解決するための方法もほとんど分からない人々が、インターネットを使用しようとする一般の人々なのです。それは、この講演を聞きに来られたみなさんとは、まったく違います。このような初心者を対象にインターネットを普及させるためには、インターネットにアクセスするためのプロセスを、いかに「容易」にするかが課題になります。

2.変化しているウェブの現状

1994年1998年
サイト数1,000 サイト数2,800,000
スタンダードなHTML「このサイトはブラウザ○○で最適化...」
少ない補助ソフトふんだんなプラグイン
「ここをクリック」過度のインタラクティブ技法
シンプルなページダウンロードフレーム使用、登録型サイト等

普通の人々にとって複雑になっているのは、ハードウェアのシステムだけではありません。上の比較表からもわかるように、インターネットのソフトやコンテンツの世界でも、1994年から1998年の間に大きな変化が起こっています。サイト数は急激に増え、新しいブラウザやプラグインを活用した、これまでにない機能と見映えのサイトが多数誕生しました。登録しなければ、見ることさえできないサイトも少なくありません。しかし、あちこちで登録させられるIDやパスワードをいちいち覚えていられる人がどこにいるでしょうか?

3.満足にはほど遠いインターネットの使用感

このような悪条件下で、人々はインターネットを経験しているのです。私の見たところ、現在の企業サイトの9割以上が、利用者にとって不親切なサイトデザインになっています。ブラウザの違いで使用感が極端に違い、サイト内ナビゲーションの作りもまちまち。このようなサイトばかりを日常的に見せられていると、ユーザーにも悪いサイトが持つクセが次第にしみ込んでいきます。

アドレスを入力するとその周辺の地図を表示してくれるサイト、「MapQuest」を見ながら、悪いサイトデザインの一例を説明しましょう。このサイトで表示される地図を、ラップトップ・コンピュータのスクリーンで見たとします。非常に判読しずらい。ユーザーが本当に必要としている地図が画面上に占める割合が、約20パーセントにしかならないからです。画面の半分以上は、ブラウザのナビゲーションバーやサイトのインデックスといった機能情報に占められてしまっています。

では、デスクトップの大きな画面に表示するとどうでしょうか?残念ながら、地図が画面全体に占める割合はかえって減少し、約14パーセントになってしまいます。画面の下部分に、新規マップサーチのためのスペースや、スポンサー紹介アイコンなどが増えるため、主役である情報の比重がますます低下してしまうのです。

これはあくまでも極端な例ですが、本当にユーザーが欲しい「コンテンツ」部分のスペースが少なく、スポンサーバナー広告、サイトインデックス等が占める割合が多すぎるウェブサイトは、他にもたくさんあります。また、ブラウザのナビゲーション機能が効率的にレイアウトできていないため、スクリーン内に占める割合が必要以上に多いことも問題でしょう。

4.5年後に向けたインターネットへの提言

提言1:インターネットへのアクセスを簡単に

インターネットにアクセスするために必要なコンピュータ、ソフトウェア、モデム等の使い勝手を改善し、初心者でも簡単にインターネットが利用できる環境を整える必要があります。
提言2:ユーザーの欲するコンテンツにフォーカスしたサイトデザインを
インターネット技術の発展やデザインの良くないサイトの増加にともない、ユーザーが本当に必要な情報がスクリーン上に占めるスペースが減少しています。ウェブサイトのデザイナーは、ユーザー本位のサイトデザインを心掛けるべきです。
提言3:技術の発達に見合ったサイト作りを
今後5年間から10年間のハードウェアの発達は、ますます目覚ましいものとなるでしょう。インターネット・アクセスのスピードは、毎年50パーセントの割合で伸びています。モニターの解像度も、今後は印刷物に匹敵するレベルになるでしょう。ブラウザのナビゲーション機能も向上するでしょう。このような技術発展により、インターネットは、テレビ・ラジオ・新聞の長所を取り込み、さらにそれらを超えるメディアになる可能性を持っています。サイト作りも、このようなトレンドをにらみながら、長期的な視点で行う必要があります。
提言4:ユーザーに学ぶ姿勢を
これからのユーザーは、インターネットビジネスで成功しているサイトや、多くのユーザーが集まる優良企業サイトを頻繁に訪れ、より多くの時間を過ごすことになるでしょう。そして、「なにが正しいのか、なにが正しくないのか」を学ぶことになるのです。その意識の高まったユーザーからのフィードバックを吸収し、企業サイトの改善を行う必要があります。


Nielsen氏の指摘には、当たり前のようでいて、実はほとんどの企業が見過ごしているポイントが含まれています。インターネットビジネスも、最近はさまざまな分野にわかれており、日々の仕事に没頭していると、どうしてもその専門の範囲内だけで技術やコンテンツを考えてしまいがちです。インターネットのトレンドを的確に把握し、市場への影響力を持った氏の、広い視野に立った講演は、インターネットのプロを自認する人々にも新鮮なヒントを与えてくれます。

Nielsen氏は、2週間毎に「Alertbox」というコラムも発表しています。ぜひ、定期的に目を通してみてください。



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