海外インターネットビジネス動向


News Volume 35 98年10月7日

ナビゲーションと情報提供

前回ご紹介した「NetSmart Research」の統計が示していたように、女性インターネットユーザーの86パーセントは、「ウェブサイトのナビゲーションの簡易さ」に高い関心があります。今後、インターネットを使用する初心者が急増すれば、この関心はますます高まるはずです。

そのため、今回のニュースレターでは、簡易的なナビゲーションを用い、販売に必要な最低限の情報を上手く伝えている、ワイン販売企業「Virtual Vinyards」のサイトをご紹介しましょう。


(1)今回紹介する「ナビゲーションと情報提供」の事例

Virtual Vineyards:
http://www.virtualvin.com/

●必要十分なナビゲーション

このサイトには、日本語のページが用意されています。この日本語ページは、通信費が高くゆっくりとネットサーフィンができない日本のインターネットユーザーの環境を考慮し、ユーザーがショッピングをするうえで必要な情報と、「Virtual Vineyards」が顧客に伝えたい情報に的を絞り、コンパクトにまとめています。

サイト紹介のために、オーナーであるグラノフ氏の挨拶文のキーワードをハイパーリンクにし、ナビゲーションを行っています。ユーザーが、この文を読みながら「Virtual Vineyards」のワイン、フーズの情報を自然な形で入手し、実際に購入するまでの過程を、スムーズに理解できるように工夫しています。

●必要最低限な情報とは

ワインに関する情報を欲しているユーザーに対して、スムーズな販売を行うために最低限伝えるべきこととは何でしょうか? グラノフ氏のご挨拶の中に集約され、ハイパーリンクになっている必要項目をここでご紹介します。

1.  専門家の紹介

訪問者の立場から考えると、ワインの専門家がどのような経歴をもっているか知りたいものです。その専門家の輝かしい経歴があるほど、アドバイスに価値もでてきます。このご挨拶のなかでは、オーナー兼マスターソムリエであるグラノフ氏、ワインショップのマスターソムリエであるゲイザー氏、フードショップのフードバイヤーのレジーナ氏の紹介にハイパーリンクがしてあります。

2.  商品コーナー

もちろん、この「Virtual Vineyards」のメインコーナーである「ワインショップ」「フードショップ」の入口にリンクがしてあります。たとえば、「ワインショップ」のトップページには、マスターソムリエが薦めるワインの情報が目立つようにレイアウトされています。このお薦めワインは、毎回訪問者が訪れるたびに違う商品が現れるようにプログラムされています。一本に決めきれないお薦めワインを、このように表示するのも面白いアイデアです。

また、最近の傾向としてサイト内の商品、キーワードを検索できる機能を盛り込む企業ホームページが増えてきました。この「Virtual Vineyards」も、最近この検索機能を新たに追加しています。「価格」「味」等のカテゴリーを選択し検索すると、希望にかなったワインが一覧になります。

多くのインターネットユーザーは、サイトのごくわずかなページしか訪れないという統計があります。時間を気にしながらネットサーフィンをしているユーザーに、効率的に情報提供を行うこの種の工夫が不可欠です。

3.  商品保証

商品の品質保証、信頼できる発送、すぐれたカスタマーサービスのすべてを約束し、顧客が満足するショッピングができる態勢を宣言しています。これだけはっきりと宣言しているのであれば、一度は試しに購入してみようか、と思うのではないでしょうか。

4.  オーダーの仕方

個人口座の開設方法、欲しい商品の選択方法等を日本語で細かく解説しています。ユーザーが不安に思うことを解消するオーダーシステムを提供することで、オンライン販売の売上をのばすことができるのです。

5.  付加価値

必要最低限伝えるべき情報には含まれないかもしれませんが、このサイトは、単にワイン販売を行うだけではなく、来てくださった訪問者がワインをより楽しむための工夫がしてあります。「デモンストレーションキッチン」というコーナーを設け、今の季節の新鮮な食材を使用した料理の作り方を紹介し、その料理にあうワインを推薦しています。

ショッピングをする場合、単に商品の紹介だけではなく、何らかの付加価値があると購買意欲が刺激されます。このサイトの「デモンストレーションキッチン」の情報も、訪問者にとっては新しい種類のワインと料理を試す良いきっかけになり、「Virtual Vineyards」にとっては、訪問者の衝動買いが期待できる販売促進の方法になっています。


(2)「Virtual Vineyards」が成功した背景

顧客に伝えるべき情報をコンパクトにまとめ、ナビゲーション機能を持たせることに成功している「Virtual Vineyards」のコミュニケーションの上手さとともに、この企業は自社の商品特性、購買者の動向を十分に分析しています。

数年前、アメリカでやっとインターネットという言葉が使われだした頃、ユーザーは自分の身近で手に入れることがむずかしい商品・サービス等の情報を得るために、インターネットを利用し始めました。このような使い方は、いまだに変わらず存在しています。他では手に入らない詳細情報をインターネットから入手することによって、前回もご紹介した「新聞、雑誌で得た知識をさらに深める」というニーズを満たしているのです。

こうしたユーザーニーズによくマッチしたサイトといえるのが、この「Virtual Vineyards」なのです。自分の生活圏のなかにある小売店に、ワインの知識が豊富な店員がいるのはまれなことです。しかし、イタリア料理、フランス料理をはじめとして、外食でワインを飲む機会が増えてきた昨今、多くの人々がワインに高い関心を示すようになってきました。

「身近では入手しにくい情報」「詳細な商品情報への欲求」「人々の商品に対する関心の高まり」「専門的なアドバイスの必要性」、これらの商品特性、商品をとりまく環境をよく理解し、ホームページ制作を行ったことが成功要因になっています。


今回ご紹介した「Virtual Vineyards」の英語で書かれているサイトには、さらにギフトショップをはじめとするさまざまなサービス、情報が用意されています。しかし、今回このサイトの日本語ページをご紹介したように、サイト内のすべての情報を知らなくとも、ユーザーが安心してショッピングを行う環境を作ることは可能です。必要最低限の情報をコンパクトにまとめ、ユーザーに示す。このようなナビゲーションがこれからますます必要になるでしょう。



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