海外インターネットビジネス動向
News Volume 59 99年11月10日
ニーズを育てる
インターネットユーザーの多くは、オンラインショップを訪れるときに、自分が欲しい商品の具体像をかなりはっきりと絞り込んでいます。一定の条件にかなった商品を求めて複数のサイトを横断的に訪れ、価格・機能・品質等を比較した上で購入するユーザー。過去にこのニュースレターでもたびたび取り上げたように、こうした主体的ユーザーから支持されるためには、それぞれのニーズに合った商品が簡単・確実に選べるような仕組みが不可欠です。
しかし、数多いウェブサイトの中から、せっかく自社サイトを訪れてくれたインターネットユーザーに、「いま欲しい商品」を受け身的に販売するだけでは、不十分ではないでしょうか。もう一歩踏み込んで、ユーザーを教育しながら新たなニーズを育て、他商品の購入にまで結び付けることができれば、多くの予算をかけてサイトの認知度を高めるプロモーション活動も生きてくるのです。
今回のニュースレターでは、サイトを訪れるインターネットユーザーがはっきりと気づいていないニーズを育て上げる工夫を施し、商品販売増に結び付けている企業サイトをご紹介しましょう。
今回取り上げる事例
REI:
http://www.rei.com/
(アウトドア用品を販売する人気企業サイト)
1. 学習コーナー
このサイトを訪れると、「Learn & Share」というコーナーが目に付きます。これは、さまざまなアウトドア活動に関する豊富な知識を、ユーザーに学習(Learn)・交換(Share)してもらおうというコーナーで、愛好者を対象とした本格的な情報センターになっています。
このうち、学習コーナーは、「フィットネス」「キャンピング/ハイキング」「クライミング」「サイクリング」「パドリング」「スノースポーツ」という6種類のカテゴリー別に、役立つ知識を集めています。
各カテゴリーの情報量は、そのまま入門書としても通用するほどの充実ぶりで、たとえば「フィットネス」のカテゴリーだけでも、「フィットネス用のウェアの選び方」「けがの防止法」「用具の手入れ法」「健康づくりのヒント」「ランニングのためのフィットネス・クリニック」など、20以上の大見出しが用意されています。
ユーザーは、自分の関心に応じてコンテンツを読み進むうちに、アウトドア活動についての知識を深め、その奥深い魅力に目覚めていくことでしょう。そしてその過程で、当然自分がそれまで気づいていなかったニーズも発見することになるでしょう。「ランニングシューズが欲しいと思って、REIのサイトに来てみたけれど、『健康づくりのヒント』には、運動中の心拍数をきちんと把握しながらエクササイズを行わないと、かえって健康を損なってしまうということが書いてあるな。それじゃ、心拍モニターも買わなくちゃ」
このように、ユーザーの関心分野にターゲティングした情報リソースセンターを築くことで、REIは、顧客の知識レベルを高めてさらなるニーズを育て、販売増へと繋げる仕組みを確立しています。
2. 情報交換コーナー
上記の6カテゴリーには、それぞれユーザー同志が生の情報を交換できるコミュニケーションの場が用意されています。たとえば、フィットネスのカテゴリーには、「お気に入りワークアウト」「スケート・ランニングに適したスポット」「用具」「栄養管理」「スイミングプールとプログラム」といった話題を扱うコミュニティーが揃い、活発な情報交換が行われています。
このうち「お気に入りワークアウト」では、スキーシーズンを間近に控えた今の季節にふさわしく、「スキーのためにどのようにシェイプアップすれば良いでしょう」という質問に、多くの人が回答しています。効果的なトレーニング用品を具体的商品名とともに紹介する投稿も多く、ユーザーの購買動機を高める上でかなりの影響力があります。
3. ニーズを育て商品販売へ
REIは、学習と情報交換というコーナーを通じて育んだ新たなユーザーニーズを、きちんと商品販売に結び付ける工夫も怠っていません。学習コーナーのテキスト情報には、要所ごとに関連商品の紹介ページへのリンクが織り込まれています。ユーザーの購買意欲が刺激されたその時に、間髪を入れずショップに誘導する効果的なナビゲーションを作り上げている点で、REIのサイトは優れているのです。
多くのコストをかけて膨大な情報を提供し、ユーザーの知識レベルを高めることに成功しても、それだけで終わってしまっては、せっかくの投資が十分に生かされたとは言えません。より高度なユーザーニーズを育て上げるための努力は、新たに生まれるニーズに応えるスムーズな商品提案・販売の仕組みと連動することではじめて、具体的な成果に結び付くのです。
顧客ニーズを効果的に汲み取る仕組み作りは、すでにさまざまな形で検討・実現されています。しかし、ユーザーの潜在的ニーズは一つだけとは限りません。今回ご紹介したように、サイト訪問時にユーザー自身も気づいていない新たなニーズを育て上げるという視点を持つことで、ユーザーとの繋がりを深めながら、一人当たりの売上を伸ばすという一石二鳥の効果が狙えるのです。
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