海外インターネットビジネス動向
News Volume 109 2006年7月3日
検索行動と購買の実態を知る
検索エンジン経由でネットショップを訪れるネットユーザーのすべてが購入目的ではない。よく考えてみると、このことは当たり前ですが、購入目的であるか否かの購買行動の実態を把握し、検索エンジン最適化(SEO)対策やコンバージョン(購買)対策を行なっている会社は、まだ決して多くないでしょう。
今回のコラムでは、以下の米国の調査結果をもとに、検索順位の上位に表示されたウェブページを訪れるネットユーザー向けの対策について、検索行動と購買の関係から考えてみましょう。
■ comScore Study Confirms the Importance of Search in Influencing Offline Buying
・検索された商品分類と購買の実態
消費者が、関心を寄せている商品を調べるために、検索エンジンを利用する機会がずいぶんと増えていますが、商品に関連した検索を行なった消費者の中で、最終的な購入に至った割合は25%(全商品ジャンルの平均割合)でした。(この購入率は、オンラインショップにおける購入とは限りません。ネットで調べて、リアル店舗で購入した割合も含まれます)
この購入率は、商品カテゴリーによっても、かなりバラツキがあります。「アパレル&アクセサリー43%」「玩具&ホビー42%」「音楽/映画/ビデオ28%」「電化製品18%」「ビデオゲーム関連17%」「ジュエリー&時計15%」となっています。
さらに、検索エンジン利用後の商品購入は、オフライン購入とオンライン購入に分類することができます。以下のパーセントは、米国の年末商戦期間中に最終的な購入に至った消費者が、オフラインで購入したか、オンラインで購入したかを示す割合となっています。
商品カテゴリー全体 オフライン 63% オンライン 37%
アパレル&アクセサリー オフライン 65% オンライン 35%
玩具&ホビー オフライン 88% オンライン 12%
音楽/映画/ビデオ オフライン 83% オンライン 17%
電化製品 オフライン 84% オンライン 16%
ビデオゲーム関連 オフライン 93% オンライン 7%
ジュエリー&時計 オフライン 75% オンライン 25%
全体的な傾向として、オンラインよりもオフラインで購入するケースが多くなっています。商品についての情報や販売している店舗の情報をインターネットで調べてから、店舗を訪れ、実際に商品を確認してから購入するという消費者が多いのです。
注: 同調査は、米国でもっとも消費者の購買意欲が高い時期である、クリスマス商戦時期の購買の実態となっているため、比較的高いコンバージョン率(購買率)となっています。
・ネットショップ購入者の購買実態
検索エンジンで検索した当日に購入したネットユーザーの割合はどの位でしょうか。
前項では、オフライン購入とオンライン購入の実態について見てきましたが、「オンライン購入」において、当日購入したか、後日購入したかを調べた調査結果もあります。(前項とは掲載されている商品カテゴリーが多少異なっています)
商品カテゴリー全体 後日購入 56% 検索当日購入 44%
音楽/映画/ビデオ 後日購入77% 検索当日購入33%
コンピュータ/周辺機器/PDA 後日購入 69% 検索当日購入 31%
ホーム&ガーデン 後日購入 69% 検索当日購入 31%
玩具&ホビー 後日購入 61% 検索当日購入 39%
ビデオゲーム関連 後日購入 58% 検索当日購入 42%
ジュエリー&時計 後日購入 57% 検索当日購入 43%
たとえば、「ジュエリー&時計」では、購入者全体に占めるオンライン購入割合は25%(前項参照)と比較的高い割合を示し、かつ検索当日に購入したという割合も高く43%となっています。
・検索回数の違いに表れる購買行動
購入者となるネットユーザーは、検索回数が多い。購入に至らなかったネットユーザーと比較して、最終的に商品を購入した消費者は、検索エンジンを利用する回数が圧倒的に多いということも知っておかなければなりません。
商品カテゴリー全体 検索者の検索回数 6.7回 購入者の検索回数 65.1回
ホーム&ガーデン 検索者の検索回数 3.1回 購入者の検索回数 70.2回
電化製品 検索者の検索回数 2.5回 購入者の検索回数 88.0回
音楽/映画/ビデオ 検索者の検索回数 2.8回 購入者の検索回数 59.0回
玩具&ホビー 検索者の検索回数 2.4回 購入者の検索回数 46.2回
アパレル&アクセサリー 検索者の検索回数 2.3回 購入者の検索回数 15.4回
「ホーム&ガーデン」では、購入者の検索回数は、非購入者の22.6倍です。さらに、ComScoreのプレスリリースでは、検索回数が多いばかりではなく、最終的に商品を購入した消費者は、検索を開始した時期も早いということが報告されています。(通常は、感謝祭後から行動を起こすことが多いのですが、検索回数の多い購入者は、感謝祭前から検索を開始しているケースが多いのです)
・検索順位上位対策とは違う検討事項
- 商品カテゴリーによって、商品検索者の購買意欲に違いがある。
- オンラインで購入するネットユーザーの割合は決して高くない。
- 検索当日以降に、オンラインショップで購入するケースの方が多い。
- 購入者は、何度も検索して商品購入を決める。
「検索エンジン最適化(SEO)や商品紹介がうまくいっていない」
このように感じているホームページ関係者であれば、これらの4項目を念頭に対策を講じることができるはずです。
ネットショップの対策案1−商品紹介文の変更
購買に至る率の高低によって、商品の紹介方法が異なります。つまり、購入を迷っている人に商品を紹介するのと、購入する気になっている人に商品を紹介するのでは、当然訴求ポイントが違ってくるのです。
ネットショップの対策案2−リアル店舗への誘導
リアル店舗がある会社のウェブサイトでは、ネットショップで購入を完了させる必要はありません。多くのネットユーザーを店舗に誘導する施策を検討し、ウェブサイトで紹介することで、他社に消費者が流れることを防ぎます。
ネットショップの対策案3−再訪の仕組み
検索した当日に購入するネットユーザーの割合が高くないのであれば、改めて自社サイトを訪問することができる仕組みを工夫する必要があります。多くのネットユーザーは、検索エンジンの検索結果から複数のサイトを訪れます。いくつもサイトを訪れているうちに、関心を寄せたサイトに改めて戻ることができない場合もしばしばです。このような状況を避けるためにも、再訪を促す仕組みが必要となるのです。
ネットショップの対策案4−早めの検索エンジン対策
検索エンジン対策は早めにすることもポイントの一つです。バレンタインデー、母の日などのイベントに関連した商品を扱っている場合、競合他社よりも早めにSEO対策をしたり、検索連動型広告を出稿したりと、早くから行動しておくことが、購買意欲の高いネットユーザーとの関係作りに不可欠なのです。
■ 「検索行動と購買の実態を知る」のむすび
検索エンジンの利用と購買行動には密接な関係があります。検索エンジン経由のネットユーザーの購買意欲を高め、オンライン購入にも、オフライン購入にも対応できる仕組みを作ることができれば、販売のチャンスが広がります。
アクセス解析ツールで、自社サイトを検索エンジン経由で訪れるネットユーザーの実態を詳細に分析し、検索エンジンと購買の実態を探ってみてください。きっと新たな発見があるはずです。
追記: 最近は、書籍「ネットビジネス経営講座『売れない理由』の見つけ方」(翔泳社)の発売によって、アクセス分析のレポートを作成するご依頼が増えています。(AIMについてご理解いただき、あなたに関連するリンクよりご相談ください)
「自社ではなかなかアクセス解析ができていない」という会社の方は、一度現状分析をしてみませんか。売り上げを伸ばすための新たな発見がいろいろと見つかるはずです。
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